人々が作るパブリック・コレクション:独・ルートヴィヒ美術館における現代美術コレクションの形成
2022年6月30日
アーカイブ動画をご視聴いただけます。
開催趣旨
18世紀末より、市民が主体的に活動する「クンストフェライン(芸術協会)」の伝統を持つドイツでは、公的な美術館の活動にも市民が積極的にかかわってきた。ドイツのケルン市が運営するルートヴィヒ美術館もまた、その設立と活動に市民が大きな役割を果たしている公的美術館の一つである。美術館の構想は、ペーター&イレーネ・ルートヴィヒが、ポップ・アートやロシア・アヴァンギャルドなど、約350点の作品をケルン市に寄贈した1976年に始まった。また同館は、ケルンの弁護士だったヨーゼフ・ハウプリヒが1946年にケルン市に寄贈した表現主義や新即物主義などの近代美術や、レオ・フリッツ&レナーテ・グルーバーの協力から始まった膨大な写真コレクションなど、多数の個人コレクターに由来する作品群を所蔵する。
一方、ルートヴィヒ美術館の現代美術コレクションの形成には、「ルートヴィヒ美術館ケルン現代美術協会」も大きく貢献している。1985年、現代美術振興と美術館支援を目的に設立されたこの組織は、現在約650人の会員からなり、2018年にはアメリカに国際支部も設けられた。協会は、さまざまなプログラムやイベントを実施するほか、作品の購入も支援している。また、ルートヴィヒ美術館の現代美術コレクションの拡大には、「ルートヴィヒ美術館芸術財団」が担う役割も大きい。2008年にケルン市が設立したこの財団は、地方自治体が設置したドイツで初めての財団のひとつであり、作品の寄贈に関心があるコレクターを支援することで、美術館のコレクション拡大に寄与している。
このようにルートヴィヒ美術館では、市民の協力を得るさまざまなシステムがうまく機能している。そこで、館長のイルマーズ・ズィヴィオー氏を招聘し、美術館と市民との生きた交流とその成果を紹介いただき、日本における市民と美術館との関係について考える機会としたい。
プログラム概要
講師: イルマーズ・ズィヴィオー(ルートヴィヒ美術館館長)
モデレーター: 片岡真実(日本現代アート委員会座長/アート・コミュニケーションセンター(仮称)
エグゼクティブ・アドバイザー/森美術館館長)
日 時: 2022年6月30日(木)17:00〜18:30(開場16:45)
会場: 国立新美術館3F講堂(ライブ配信あり)
言語: 英語及び日本語、日英同時通訳あり
参加費: 無料
参加方法: ①国立新美術館3階講堂(東京都港区六本木7-22-2) 国立新美術館での参加をご希望の方は、下記からお申込ください。(定員70名、先着申込順)
https://forms.office.com/r/kNeX1bBkJx
②YouTubeライブ配信:定員なし(事前申込不要)
下記からご視聴ください。
登壇者プロフィール(敬称略)
イルマーズ・ズィヴィオールートヴィヒ美術館(ドイツ、ケルン)館長

©Falko Alexander
ドイツのハンブルク・クンストフェライン館長、オーストリアのブレンゲンツ美術館(KUB)館長を経て2015年2月より現職。2015年のベネチア・ビエンナーレではオーストリア館の、今年2022年にはドイツ館のキュレーションを務めた。『Artforum』や『Camera Austria』、『Texte zur Kunst』に定期的に寄稿。20・21世紀美術に関して、展覧会カタログを含め50冊以上の書籍の刊行に関わり、国外の美術館とのコラボレーションも数多い。アイデンティティ・ポリティクスや文化的帰属などを含めた社会的問題に焦点を当てており、アフリカ、ラテン・アメリカ、アジアに強い関心を持つ。近年手掛けた展覧会に「Haegue Yang: ETA 1994–2018」展(2018年)、「We Call It Ludwig」展(2017年)などがある。
モデレーター:片岡真実日本現代アート委員会座長/アート・コミュニケーションセンター(仮称)
エグゼクティブ・アドバイザー/森美術館館長

©伊藤彰紀
ニッセイ基礎研究所都市開発部、東京オペラシティアートギャラリー・チーフキュレーターを経て、2003年より森美術館。2020年より現職。2007~2009年はヘイワード・ギャラリー(ロンドン)にて、インターナショナル・キュレーターを兼務。第9回光州ビエンナーレ(2012年)共同芸術監督、第21回シドニー・ビエンナーレ芸術監督(2018年)、国際芸術祭「あいち2022」芸術監督。CIMAM(国際美術館会議)会長。