A1522

清風与平, 三代

| 1851 | 1914-07-15

SEIFŪ Yohei, III

| 1851 | 1914-07-15

作家名
  • 清風与平, 三代
  • SEIFŪ Yohei, III (index name)
  • Seifū Yohei, III (display name)
  • 三代清風与平 (Japanese display name)
  • さんだい せいふう よへい (transliterated hiragana)
  • 三代清風與平
  • 岡田平橘 (birth name)
  • 新開清山 (art name)
  • 靖山
  • 晟山
生年月日/結成年月日
1851
生地/結成地
播磨国印南郡(現・兵庫県姫路市)
没年月日/解散年月日
1914-07-15
性別
男性
活動領域
  • 工芸

作家解説

三代清風与平(與平)の幼名は岡田平橘といい、1851(嘉永4)年に播磨国印南郡大塩村(現・兵庫県姫路市大塩町)の岡田良平の次男として生まれる。父の岡田良平(号:得鳳)は儒者であり花鳥画の腕で知られた。1863(文久3)年、大阪の田能村直入[たのむらちょくにゅう]の門に入り南画を学ぶ。1865(慶応元)年に体調を崩して帰郷し、恢復後の1866(慶応2)年に京都五条坂の二代清風与平(号:五渓[ごけい]、1845-1878)の妹くまの婿養子として清風家に入る。陶画工として修業を始めたが陶画以外の工程についても独学で習得。1872(明治5)年に一家を創設することを許されたため、新開家を創始し清山[せいざん]と号する。長男の梅渓[ばいけい]は子供のいなかった二代清風与平の養子となる。1878(明治11)年、二代清風与平が没し家督を継いだ梅渓の後見人となり靖山[せいざん]と号す。後に梅渓が夭逝したために三代清風与平(号:晟山[せいざん])を襲名した。 第4回パリ万国博覧会(1889年)で銅賞、翌年の第3回内国勧業博覧会(東京・上野、1890年)で妙技一等賞を受賞し一躍注目を集める。1892(明治25)年、陶工として初の帝室技芸員に任命される。第4回内国勧業博覧会(京都・岡崎、1895年)では、美術部鑑別官及び審査官を務め、名誉賞銀牌を受賞。受賞作の内の1点《青華松鶴画花瓶》と同意匠の作品が英国オックスフォード大学のアシュモレアン美術館に所蔵されている。同年、陶業界に果たした功績を認められ、陶工として初の緑綬褒章を受章した。以後、海外では第5回パリ万国博覧会(パリ、1900年)で銀牌を受賞。受賞作である磁器花瓶3種は《瑍白磁[かんぱくじ]彫刻画花瓶》(1899年)が宮内庁用度課、《天目釉雲龍班花瓶》(1899年)が内閣府迎賓館、《青華磁花鳥模様花瓶》(1899年)がベルギー国ルーヴァンカトリック大学東方図書館の所蔵となっている。また、日英博覧会(ロンドン、1910年)では金賞を受賞した。国内では日本美術協会展覧会等で受賞を重ねると共に、博覧会・展覧会の審査員や組合の役員を歴任する。1914(大正3)年7月、腸癌で没した。家督は息子である四代清風与平(号:成山)が継いだ。昭和期に日展(日本美術展覧会)で活躍した陶芸家の新開寛山[かんざん]、直木賞作家の岡田誠三は三代清風与平の孫にあたる。 清風家は江戸時代後期に流行していた中国明代・清代の煎茶道具や文房具の写しを得意としていた。三代清風与平もそれに倣い中国陶磁に範を求めた染付の作品が多い。南画の師であった田能村直入やその養子の田能村小斎[しょうさい]が揮毫した煎茶碗も制作している。他方、帝室技芸員任命後の主要作品は和様化し、中国陶磁には見られない独自技法や日本風の意匠の導入、抹茶碗や水指などの抹茶用の道具の制作を手掛けるようにもなった。明治期の陶工としては珍しく、輸出のための大量生産は行わなかった。1907(明治40)年頃までは自家の登窯を所有していなかったこともあり、同時代の陶工・陶業家と比較すると現存作品数は少ないと言える。 三代清風与平は新開清山[せいざん]として独立した直後から、新技術・素材の研究に取り組み、生涯にわたって70種を超える新技法を発明した。中国陶磁を凌駕しようと多種の彩釉を発明・応用し、それを同業者に広く公開したことが緑綬褒章の受章理由に挙げられている。三代清風与平が導入した技法で代表的なものは以下である。1872年に発明した宋代の定窯白磁を思わせる象牙色の「太白磁[たいはくじ]」には、繊細な浮彫や彫刻を施した作品が多い。代表作に《白磁蝶牡丹浮文大瓶》(1892年、東京国立博物館、重要文化財)がある。1893(明治26)年に完成した「瑍白磁」はこの「太白磁」の文様を際立たせるように淡い紅色で背景を色付けたものである。代表作に《瑍白磁牡丹文花瓶》(1895–1920年頃、京都国立近代美術館)がある。また、淡紅色に加えて淡黄色が出た《旭彩山桜図花瓶》(1905年、皇居三の丸尚蔵館、東京)は三代清風与平作中の白眉とされている。1882(明治15)年発明の秘色磁砧釉[ひしょくじきぬたゆう](秘色釉・秘色窯と表記することもある)は宋から元代の龍泉窯青磁を思わせるオリーブグリーン色の青磁である。代表作に《飛青磁花瓶》(1912年、東京国立博物館)がある。この他にも「天青釉」、「月宵青磁」、「水色釉」、「紺磁」、「藍磁」と名付けられた青味の強い釉薬にも取り組んでいる。この他にも「辰砂釉」、「葵花釉」、「天目釉」、「紫釉」、「珊瑚釉」、「黄釉」、「桜花彩釉」、「白釉」、「黒釉」等の開発に成功している。また多彩な釉薬を複数組み合わせて精緻で上品な絵付けを施した作品を「百花錦[ひゃっかにしき]」と名付けた。 (前﨑信也)(掲載日:2023-09-26)

2009
Seifu Yohei and His Contemporaries: Meiji Ceramics in the Scholarly Taste, Museum of East Asian Art, Bath, UK, 2009.
2010
明治の人間国宝: 帝室技芸員の技と美 清風與平・宮川香山から板谷波山まで, 愛知県陶磁資料館, 2010年.
2014
没後100年: 大塩が生んだ京焼の名工: 三代清風與平, 姫路市書写の里・美術工芸館, 2014年.
2014
清風與平家: 初代から四代, 京都陶磁器会館, 2014年.
2015
Masters of Japanese Porcelain, スコットランド国立博物館, 2015年.
2023
Colors of Kyoto: The Seifū Yohei Ceramic Studio, クリーブランド美術館, 2023–2024年.

  • 東京国立博物館
  • 三の丸尚蔵館, 東京
  • 愛知県陶磁美術館
  • 京都国立近代美術館
  • 泉屋博古館, 京都
  • 兵庫陶芸美術館
  • 大英博物館, ロンドン
  • スコットランド国立博物館, エディンバラ
  • クリーブランド美術館, オハイオ
  • ボストン美術館
  • アシュモレアン博物館, オックスフォード
  • ミシガン大学美術館

1891
桜井敬太郎「清風與平君伝」『京都府下人物誌: 第1編』京都: 金口木舌堂, 1891年, 152-159頁.
1892
篠田正作「清風與平君」『日本新豪傑伝: 実業立志』大阪: 偉業館, 1892年, 405-408頁.
1893
京都美術協会編「帝室技芸員清風與平氏履歴」『京都美術協会雜誌』17号 (1893年): 13-22頁.
1901
黒田譲「清風與平氏」『名家歴訪録: 上』東京: 黒田譲, 1901年, 25-45頁.
1920
黒田天外「清風與平氏」『一家一彩録』東京: 国書刊行会, 1920年, 181-184頁.
1935
「清風與平」真清水蔵六『古今京窯泥中閑話』京都: 永沢金港堂, 1935年, 62-63頁.
1985
中ノ堂一信「三代清風與平の陶芸」『現代陶芸のあけぼの 現代日本の陶芸: 第1巻』吉田耕三責任編集. 東京: 講談社, 1985年.
1997
中ノ堂一信「三代清風与平」『近代日本の陶芸家』京都: 河原書店, 1997年.
2006
岡本隆志「三代清風與平について」1-3『三の丸尚蔵館年報・紀要』11 (2006年3月): 59-68頁; 12 (2007年3月): 48-62頁; 14 (2009年3月): 59-66頁.
2009
Maezaki, Shin'ya. "Meiji Ceramics for the Japanese Domestic Market: Sencha and Japanese Literati Taste". Transactions of the Oriental Ceramic Society, Vol. 74 (October 2009).
2010
愛知県陶磁資料館学芸課編『明治の人間国宝: 帝室技芸員の技と美 清風與平・宮川香山から板谷波山まで』瀬戸: 愛知県陶磁資料館, 2010年 (会場: 愛知県陶磁資料館).
2012
関和男『三代清風与平: 京都陶芸家: 明治の輝き近代陶芸の始まり つぼみBOOKS, 1』東京: 創樹社美術出版, 2012年.
2013
前﨑信也「近代陶磁と特許制度: 清風與平家から見た「写し」をめぐる京焼の19世紀」『「写し」の力: 創造と継承のマトリクス』島尾新, 彬子女王, 亀田和子編. 京都: 思文閣出版, 2013年, 73-109頁.
2014
前崎信也編『大塩が生んだ京焼の名工: 三代清風與平』[出版地不明]: キャッチボール, 2014年 (会場: 姫路市書写の里・美術工芸館) [展覧会カタログ].
2016
前﨑信也「帝室技芸員としての三代清風与平」『近代陶磁』17号(2016年6月): 7-18頁.
2020
岡本隆志「三代清風與平作 旭彩山桜図花瓶」『国華』第1492号 (2020年2月): 43, 45-47頁.
2023
Maezaki, Shinya, Sinéad Vilbar. Colors of Kyoto: The Seifū Yohei Ceramic Studio. Cleveland Masterwork Series, 7. [Exh. cat.]. Lewes: D Giles Limited, 2023 (Venue: The Cleveland Museum of Art).

NDL ID
01226675
  • 2024-10-04