A1067

石内都

| 1947-03-27 |

ISHIUCHI Miyako

| 1947-03-27 |

作家名
  • 石内都
  • ISHIUCHI Miyako (index name)
  • Ishiuchi Miyako (display name)
  • 石内都 (Japanese display name)
  • いしうち みやこ (transliterated hiragana)
  • 藤倉陽子 (real name)
  • ふじくら ようこ
生年月日/結成年月日
1947-03-27
生地/結成地
群馬県桐生市
性別
女性
活動領域
  • 写真

作家解説

1947年3月27日群馬県山田郡相生村(現・桐生市相生町)に生まれる。本名藤倉陽子。1953年神奈川県横須賀市追浜本町に移り、同地で育つ。1965年横須賀市立第二高等学校卒業。1年の浪人を経て1966年多摩美術大学デザイン科に進む。2年次より染織を専攻。1969年、折からの大学紛争の中、大学封鎖などに加わり、学内のサークル活動などを通じて知り合っていた彦坂尚嘉、堀浩哉らと「美術家共闘会議」(通称「美共闘」)を結成。1970年大学を中退する。 知人からカメラや暗室用具など写真機材一式を預かったことをきっかけに、独学で写真にとりくみ始め、1975年「写真効果・3」(シミズ画廊、東京)に参加。このとき作家名として母親の結婚前の名である「石内都」を使い始める。1977年少女時代を過ごした横須賀の街を撮影した作品による個展「絶唱、横須賀ストーリー」(ニコンサロン、東京・銀座、この時展示されたプリントはのちに横浜美術館が収蔵)を開催、新進の写真家として注目され、1978年に開催した個展「アパート」(ニコンサロン、東京・銀座、のち連作の一部を東京都写真美術館が収蔵)および同年の写真集『APARTMENT』(写真通信社)により、1979年第4回木村伊兵衛写真賞を受賞。同年ニューヨークで開催された日本の現代写真家のグループ展、「JAPAN: A Self Portrait 自写像 日本」(国際写真センター、アメリカ・ニューヨーク)の出品者にも選ばれた。1980年には「連夜の街」展(ニコンサロン、東京・銀座他、のち連作の一部を東京国立近代美術館が収蔵)を開催、1981年には写真集『連夜の街』(朝日ソノラマ)を出版。 横須賀で少女期を過ごした経験と記憶に端を発する〈絶唱、横須賀ストーリー〉、自身も長く暮らした木造アパートをめぐる〈APARTMENT〉、旧赤線地帯の建物を主題とする〈連夜の街〉という初期三部作を通じて評価を確立するとともに、風景や建物に残る人間の生の痕跡や記憶のあり方へと石内の関心はしだいに収斂し、それをうけて、1980年から翌年にかけて撮影された東京歯科大学旧校舎(写真集『水道橋・東京歯科大学』一世出版、1981年)や「屋内シリーズ」三部作(〈互楽荘〉1987年、〈ベイサイドコート〉1988–1989年、〈EMクラブ〉1990年)など、取り壊し前の古い建物をめぐる連作が展開された。 1988年、自分と同年生まれの女性の手と足を接写する連作〈1・9・4・7〉の撮影に着手、1990年写真集『1・9・4・7』(IPC)を刊行(のち連作の一部を東京国立近代美術館が収蔵)。同作は自身が40歳という年齢を迎えたことをきっかけに始められた連作であり、手と足をそれぞれの個人の過ごしてきた時間が凝縮された被写体として見出したことで、以後、身体をめぐる一連の作品が展開されることになった。その主なものに舞踏家大野一雄を被写体とする〈1906 to the skin〉(写真集『1906 TO THE SKIN』河出書房新社、1994年、のち連作の一部を国立国際美術館、大阪が収蔵)、詩人・伊藤比呂美を被写体とする〈手・足・肉・体〉(写真集『手・足・肉・体 Hiromi 1955』伊藤比呂美との共著、筑摩書房、1995年)、男性を被写体とする〈Chromosome XY〉(写真集『さわる Chromosome XY』新潮社、1995年、のち連作の一部を国立国際美術館、東京国立近代美術館が収蔵)、身体に残る怪我や手術の傷跡をめぐる〈SCARS〉(写真集『scars』蒼穹舎、2005年)、女性の身体の傷跡を撮影した〈Innocence〉(写真集『INNOCENCE』赤々舎、2007年)など。 2000年、母の死をきっかけに、洋服や下着、化粧道具など母の遺品をカラーフィルムで撮影し始め、写真集『Mother‘s』(蒼穹舎、2002年)にまとめる。同作により2003年第15回写真の会賞を受賞。2005年には同じモティーフによる映像作品を制作、同年開催の第51回ヴェネツィア・ビエンナーレ国際美術展において、母をめぐる一連の作品により構成された「Mother's 2000–2005: Traces of the Future(マザーズ 2000–2005 — 未来の刻印)」(コミッショナー:笠原美智子)を日本館の展示として発表した(出品作の一部を東京都写真美術館が収蔵)。2006年、初期からヴェネツィア・ビエンナーレ参加までの作家活動に対し、第58回日本写真協会賞作家賞を受賞。 2007年、広島平和記念資料館が所蔵する被爆者が身に着けていた衣服などを撮影、写真集『ひろしま』(集英社、2008年、連作の一部を東京都写真美術館が収蔵)にまとめる。同作により2009年第50回毎日芸術賞を受賞。以後、広島平和記念資料館での撮影を継続する。前作である〈Mother’s〉が肉親の遺品をめぐる作品であったのに対し、未知の他者である被爆者の遺品を撮影した経験は、2012年に撮影したフリーダ・カーロの遺品をめぐる連作や、広島の撮影で出会った古い着物から、絹織物の産地であり自身の故郷でもある桐生の絹織物工業へとモティーフが連鎖した〈絹の夢〉(個展「絹の夢」丸亀市猪熊弦一郎現代美術館、2012年)など新たな展開をもたらした。2013年には紫綬褒章を受章。 1990年代以降は海外での発表も多く、2014年ハッセルブラッド国際写真賞を受賞、2015年には「Ishiuchi Miyako: Postwar Shadows」がJ. ポール・ゲティ美術館(ロサンゼルス)で開催された。 初期三部作から〈1・9・4・7〉に始まる身体をめぐる作品は、いずれもモノクロフィルムで撮影されており、未裁断のロール印画紙から切り出した、長辺が1mを超える大判のフォーマットがプリントのサイズとしてしばしば選択された。これら大判作品を含むモノクロプリントは原則として石内自身の手によるもので、自身の制作プロセスにおいて、暗室作業を撮影と同等あるいはそれ以上に重視する姿勢について、石内は著作(『モノクローム』筑摩書房、1993年など)やインタビュー等で繰り返し言及している。35 mmフィルムから大判プリントへと引伸ばされることで現れる粒子の質感は、物質や身体に蓄積した記憶や時間という主題を視覚表象へと置き換えるうえで不可欠の要素となっており、このことは被写体となる建物や身体の表面の質感、触感あるいは傷などへの関心ともあいまって、石内作品の特性となってきた。その後に展開されてきたカラー作品においても、衣服や化粧道具など、持ち主の身体と触れ合ってきた被写体の表面に残る質感や肌理を通して、時間や記憶を浮かび上がらせようとするまなざしのあり方は一貫している。また2000年代に入ってから個展など美術館での展示の機会を重ねる中で確立されていった、展示空間に応じて自在に作品を配置する石内独特の展示方法も、その作家活動を特徴づける重要な要素となっている。 (増田 玲)(掲載日:2023-09-11)

1975
写真効果・3, シミズ画廊, 1975年.
1976
写真展 百花繚乱, シミズ画廊, 1976年.
1977
絶唱、横須賀ストーリー, 銀座ニコンサロン, 1977年.
1977
今日の写真・展 77, 神奈川県立県民ギャラリー, 1977年.
1978
アパート, 銀座ニコンサロン, 1978年.
1979
JAPAN: A Self Portrait, 自写像 日本, 国際写真センター [International Center of Photography], 1979年.
1980
連夜の街, 銀座ニコンサロン, 新宿ニコンサロン, 1980年.
1985
パリ・ニューヨーク・東京, つくば写真美術館'85, 宮城県立美術館, 1985年.
1990
女性のまなざし: 日本とドイツの女性写真家たち, 川崎市市民ミュージアム, 1990年.
1991
私という未知へ向かって: 現代女性セルフ・ポートレイト, 東京都写真美術館, 1991年.
1997
しなやかな共生: 水戸アニュアル‘97, 水戸芸術館現代美術ギャラリー, 1997年.
1999
石内都: モノクローム: 時の器, 東京国立近代美術館フィルムセンター, 1999年.
2005
マザーズ2000-2005: 未来の刻印, 第51回ヴェネツィア・ビエンナーレ美術展日本館, 2005年.
2006
石内都 Mother’s, 東京都写真美術館, 2006年.
2008
ひろしま/ヨコスカ: 石内都展, 目黒区美術館, 2008–2009年.
2009
石内都: infinity ∞: 身体のゆくえ, 群馬県立近代美術館, 2009年.
2012
石内都: 絹の夢, 丸亀市猪熊弦一郎現代美術館, 2012–2013年.
2012
The Body as Protest, アルベルティーナ美術館, 2012年.
2014
Ishiuchi Miyako: The Fabric of Photography, ハッセルブラッドセンター [Hasselblad Center], 2014–2015年.
2015
Ishiuchi Miyako: Postwar Shadows, J・ポール・ゲティ美術館 [The J. Paul Getty Museum], 2015–2016年.
2015
来るべき世界の為に1968年から1979年の日本美術・写真の実験, ヒューストン美術館, ニューヨーク大学グレイ・アート・ギャラリー, ジャパン・ソサエティ・ギャラリー, 2015-2016年.
2017
肌理と写真: 石内都, 横浜美術館, 2017-2018年.

  • 国立国際美術館, 大阪
  • 東京国立近代美術館
  • 東京都現代美術館
  • 東京都写真美術館
  • 栃木県立美術館
  • 広島市現代美術館
  • 横浜美術館
  • J・ポール・ゲティ美術館, ロサンゼルス
  • ニューヨーク近代美術館
  • サンフランシスコ近代美術館, カリフォルニア
  • テート・モダン, ロンドン

1978
石内都『Apartment: 石内都写真集』東京: 写真通信社, 1978年.
1979
石内都『絶唱, 横須賀ストーリー: 石内都写真集』東京: 写真通信社, 1979年.
1981
石内都『連夜の街: 石内都写真集』東京: 朝日ソノラマ, 1981年.
1990
石内都『1・9・4・7』東京: IPC, 1990年.
1993
石内都『モノクローム』東京: 筑摩書房, 1993年 [自筆文献].
1994
石内都『1906 to the skin』東京: 河出書房新社, 1994年.
1995
伊藤比呂美, 石内都『手・足・肉・体: Hiromi 1955』東京: 筑摩書房, 1995年.
1995
石内都『さわる: Chromosome XY フォトミュゼ』東京: 新潮社, 1995年.
1996
石内都, 楢橋朝子編『Main: Foto Magazine』1-10号 (1996-2000年). 東京: Main編集室.
1998
石内都『Yokosuka Again: 1980-1990』東京: 蒼穹舎, 1998年.
1999
増田玲, 蔵屋美香, 松本透編『石内都: モノクローム――時の器』小川紀久子, 山本仁志翻訳. 東京: 東京国立近代美術館, 1999年 (会場: 東京国立近代美術館) [展覧会カタログ].
2000
石内都『爪』東京: 平凡社, 2000年.
2001
石内都『Endless Night 2001: 連夜の街: 石内都写真集 ワイズ出版写真叢書: 7』東京: ワイズ出版, 2001年.
2002
石内都『Mother’s』東京: 蒼穹舎, 2002年.
2005
石内都『Scars』いとうはるな翻訳. 東京: 蒼穹舎, 2005年.
2005
石内都『マザーズ2000-2005: 未来の刻印』京都: 淡交社, 2005年.
2005
石内都『キズアト』大阪: 日本文教出版, 2005年 [自筆文献].
2006
東京都写真美術館編『石内都 mother's』ギャビン・フルー翻訳. 東京: 東京都写真美術館, 2006年 (会場: 東京都写真美術館) [展覧会カタログ].
2007
石内都『Club & Courts Yokosuka Yokohama』東京: 蒼穹舎, 2007年.
2007
石内都『Innocence』京都: 赤々舎, 2007年.
2008
石内都『ひろしま』東京: 集英社, 2008年.
2008
正木基, 大石真依子, 待鳥美咲編『ひろしま/ヨコスカ: 石内都展』東京: 目黒区美術館, 2008年 (会場: 目黒区美術館).
2008
『ひろしま: Strings of Time』広島: 広島市現代美術館, 2008年 (会場: 広島市現代美術館) [展覧会カタログ].
2009
石内都『Ishiuchi Miyako: infinity ∞: 身体のゆくえ』東京: 求龍堂, 2009年 (会場: 群馬県立近代美術館) [展覧会カタログ].
2010
Ishiuchi Miyako. Sweet Home Yokosuka, 1976-1980. [NewYork]: PPP Editions in association with A. Roth, 2010.
2010
石内都『Tokyo Bay Blues: 1982-1984』東京: 蒼穹舎, 2010年.
2010
小勝禮子, 中嶋泉インタヴュアー「石内都オーラル・ヒストリー 2010年12月20日」日本美術オーラル・ヒストリー・アーカイブ, ),https://oralarthistory.org/archives/ishiuchi_miyako/interview_01.php, 加藤順子, 中嶋泉 (書き起こし), 更新日2018年6月7日.
2011
小勝禮子, 中嶋泉インタヴュアー「石内都オーラル・ヒストリー 2011年1月13日」日本美術オーラル・ヒストリー・アーカイブ, https://oralarthistory.org/archives/ishiuchi_miyako/interview_02.php, 加藤順子, 中嶋泉 (書き起こし), 更新日2018年6月7日.
2012
丸亀市猪熊弦一郎現代美術館編『石内都: 絹の夢』京都: 青幻舎, 2012年 (会場: 丸亀市猪熊弦一郎現代美術館) [展覧会カタログ].
2014
Vujanovic, Dragana and Louise Wolthers (eds.). Ishiuchi Miyako: Hasselblad Award 2014. [exh. cat.], Heidelberg: Kehrer, 2014 (Venue: Hasselblad Center).
2014
Vujanovic, Dragana, and Louise Wolthers, eds. Ishiuchi Miyako: Hasselblad Award 2014. Heidelberg: Kehrer, 2014 (Venue: Hasselblad Center in the Gothenburg Museum of Art). [Exh. cat.].
2015
笠原美智子執筆『Belongings: 遺されたもの』石内都写真, 松山直希翻訳. [東京]: Case Publishing, 2015年.
2015
Maddox, Amanda. Ishiuchi Miyako: Postwar Shadows. [exh. cat.], Los Angeles: J. Paul Getty Museum, 2015 (Venue: J. Paul Getty Museum).
2015
Mitsuda, Yuri (interviewer) “Ishiuchi Miyako”. Aperture, No. 220 (Fall 2015): 122-135.
2016
石内都『From Yokosuka』鎌倉: D・A Forecast/SUPER LABO, 2016年.
2016
石内都『幼き衣へ』東京: 蒼穹舎, 2016年.
2016
石内都『フリーダ: 愛と痛み』東京: 岩波書店, 2016年.
2016
石内都『写真関係』東京: 筑摩書房, 2016年 [自筆文献].
2017
石内都『Yokohama互楽荘』東京: 蒼穹舎, 2017年.
2017
石内都『肌理 (きめ) と写真: 石内都』大澤紗蓉子, 日比野民蓉編. 東京: 求龍堂, 2017年 (会場: 横浜美術館) [展覧会カタログ].
2018
石内都『Beginnings: 1975』東京: 蒼穹舎, 2018年.
2018
「石内都オーラル・ヒストリー. 2010年12月20日」日本美術オーラル・ヒストリー・アーカイヴ. 更新日2018-06-07. http://www.oralarthistory.org/archives/ishiuchi_miyako/interview_01.php
2019
石内都『都とちひろ: ふたりの女の物語』東京: 求龍堂, 2019年.
2021
石内都『Moving Away』東京: 蒼穹舎, 2021年.
2021
石内都, 作花麻帆『見える見えない, 写真のゆくえ: 石内都展』作花麻帆編. 西宮: 西宮市大谷記念美術館, 2021年 (会場: 西宮市大谷記念美術館).

Wikipedia

石内 都(いしうち みやこ、1947年3月27日 - )は、日本の写真家。群馬県桐生市生まれ、横須賀市で育つ。横須賀市立第二高等学校卒業。多摩美術大学デザイン科入学。大学2年より染織専攻中退。1979年、写真集「APARTMENT」および写真展「アパート」にて第4回木村伊兵衛賞受賞。1999年、第15回東川賞国内作家賞、第11回写真の会賞受賞。2006年、日本写真協会賞作家賞受賞。2009年毎日芸術賞受賞。2011年、第60回神奈川文化賞受賞。2013年紫綬褒章受章。2014年、日本人としては濱谷浩、杉本博司に次いで3人目のハッセルブラッド国際写真賞受賞。1994年、グッゲンハイム美術館での「戦後日本の前衛美術」展に招待された。ヴェネツィア・ビエンナーレの2005年日本代表。2015年、The J. Paul Getty Museumにて個展「Postwar Shadows」を開催。2017年12月9日~2018年3月4日、横浜美術館にて「肌理(きめ)と写真」が開催された。皮膚や衣類と時間とのかかわりをテーマにした写真を撮り続けており、代表作に広島原爆で被爆した遺品を被写体とした「ひろしま」、フリーダ・カーロの遺品を撮影した「フリーダ 愛と痛み」など。ニューヨーク近代美術館等に作品が収蔵されている。

Information from Wikipedia, made available under theCreative Commons Attribution-ShareAlike License

VIAF ID
96585985
ULAN ID
500122671
AOW ID
_40550135
NDL ID
00116036
Wikidata ID
Q272833
  • 2023-11-10