- 作家名
- 森口華弘
- MORIGUCHI Kakō (index name)
- Moriguchi Kakō (display name)
- 森口華弘 (Japanese display name)
- もりぐち かこう (transliterated hiragana)
- 森口平七郎 (real name)
- 生年月日/結成年月日
- 1909-12-10
- 生地/結成地
- 滋賀県野洲郡守山町(現・滋賀県守山市)
- 没年月日/解散年月日
- 2008-02-20
- 没地/解散地
- 京都府京都市左京区
- 性別
- 男性
- 活動領域
- 工芸
作家解説
1909年12月10日に滋賀県野洲郡守山町(現・守山市)に生まれる。本名は平七郎。1924年に友禅師三代中川華邨[かそん]の門下となる。中川は日本画を都路華香[つじかこう]に学び、円山風の画風で友禅染の工房を主宰した人物である。模様の輪郭を作る糊糸目のない無線友禅と称されるより絵画的な作風を得意とし、図案から彩色仕上げまで華邨工房ではほぼ一貫して行っていた。森口は中川家に住み込みで友禅染の技術を学ぶ一方、日本画家で菊池芳文の弟子の疋田芳沼にも師事した。1934年に師である中川華邨の作風を広めるという意味を込めて母の従兄の坂田徳三郎より華弘の号をもらう。中川工房で森口は分業制の中で外注していた糊置きについて試行錯誤の末に自分なりの方法を完成させるとともに色の定着と発色効果を高めるための豆汁塗りの手法も会得した。さらに従来の友禅が多色を用いる一方でまとまりをなくすこともあったために、単色による統一感を求めて、色、文様、構図の研究にも打ち込んだ。こうした技術の習得と独自の作風につながる研究を行い1939年に独立。1940年頃に東京国立博物館で展示されている衣装の一部に撒糊[まきのり]の技法が用いられていることに気づき、漆芸の蒔絵のように生地全体に用いるべく華弘の代名詞となる「蒔糊」技法の研究に入る。なお、華弘が東京国立博物館で目にしたという撒糊技法について、小山弓弦葉は、東京国立博物館の戦前からの収蔵品、戦前の展覧会目録を調査した結果、友禅染は茶屋辻以外にはないことから、華弘がみたという作品が不明である旨を述べている(小山弓弦葉「森口華弘が語った『東博伝説』のゆくえ」『現代の眼』602号、東京国立近代美術館、2013年)。1941年に丸川工芸染色株式会社に取締役・技術部長として勤務するも、1940年の奢侈品等製造販売制限規則(七・七禁令)、1942年の企業整備令の交付にともない、また社員が軍需工場に徴兵されて友禅の仕事が継続不可となったことから1943年に会社が解散。同年10月に徴兵に応じて京都機械に1945年10月まで勤める。1946年より自身の仕事を徐々に再開する。1952年に京都工人社に加わり、伝統工芸の保護・育成に尽力するかたわら、創作活動に打ち込む。なお、京都工人社は、文化財保護法の施行にともなって1950年に染織、陶芸、金工、漆芸などの工芸家で組織された会である。1953年に東京工人社を糾合して日本工人社となり、伝承的工芸技術の調査研究を行うことを目的に本部を京都府教育委員会文化財保護課内においたが、翌年に全国規模の日本工芸会へと発展し解消した。
森口は作家として、1955年に第2回日本伝統工芸展に友禅訪問着《おしどり》(京都国立近代美術館)、《松》(所在不明)、《早春》(1955年、国立工芸館、金沢)の3点を出品。《おしどり》は従来の友禅の仕事として、《早春》は自らの考える創作活動として、《松》はその中間的な仕事として制作されたものである。3点ともに入選したが、全面に施した蒔糊と余白を大胆に取った構図、図案化された梅花、幹の表現がなされた《早春》が朝日新聞社賞を受賞したことは森口にとって自身の創作の方向を明確にする機会となった。翌年の第3回展に出品し、文化財保護委員会委員長賞を受賞した《薫》(1956年、国立工芸館)は、蒔糊を染め重ねることで奥行きを出すことに成功し、裾に一文字に配された老梅が森口の優れた造形感覚を示している。同年、日本工芸会正会員となる。1958年に第1回個展を日本橋三越にて開催し、以後、2003年まで個展を毎年同会場で開催する。1960年に日本工芸会理事、1962年に日本工芸会常任理事、1970年に日本工芸会副理事長となる。その間に、1967年に重要無形文化財「友禅」保持者に認定されている。1971年に紫綬褒章、1980年に勲四等旭日小授章受章。森口は日本を代表する友禅作家として数々の美術館での企画展に招待出品されているが、1982年に石川県立美術館で「友禅・人間国宝 森口華弘展」が、1985年に東京国立近代美術館で「現代染織の美 — 森口華弘・宗廣力三・志村ふくみ」展が、翌年には滋賀県立近代美術館(現・滋賀県立美術館)で「特別展 森口華弘 — 人間国宝・友禅の技」展が開催されている。森口の仕事は、蒔糊について言及されるのが常だが、《光》(1964年、京都国立近代美術館)や《四季の香》(1959年、国立工芸館)のように糸目や堰出しなどの糊置きの技法、《流水》(1959年、個人蔵)にみられる琳派などからも影響を受けた古典を現代に読み替える大胆な構図、さらには《薫秋》(1964年、国立工芸館)のように菊一輪を着物全面にクローズアップして配するという意表を突く構成といったものが単色によって見事にまとめ上げられており、現代友禅の世界が森口によって確立されたということも可能である。
(大長 智広)(掲載日:2023-09-25)
- 1955
- 第2回 日本伝統工芸展, 三越 (日本橋), 1955年.
- 1956
- 第3回 日本伝統工芸展, 三越 (日本橋), 1956年.
- 1982
- 森口華弘展: 友禅: 人間国宝, 石川県立美術館, 1982年.
- 1985
- 現代染織の美: 森口華弘・宗廣力三・志村ふくみ, 東京国立近代美術館, 1985年.
- 1986
- 森口華弘: 人間国宝・友禅の技 特別展, 滋賀県立近代美術館, 1986年.
- 1994
- 森口華弘・邦彦展: 伝統と創生・友禅の美, 大丸ミュージアムKyoto, 大丸心斎橋店, 1994年.
- 2009
- 森口華弘・邦彦展: 父子友禅人間国宝, 滋賀県立近代美術館, 日本橋三越, 2009年.
- 国立工芸館, 石川県金沢市
- 京都国立近代美術館
- 京都市美術館 (京都市京セラ美術館)
- 滋賀県立美術館
- 石川県立美術館
- 式年遷宮記念神宮美術館, 三重県伊勢市
- 1973
- 鈴田照次, 守田公夫, 森口華弘「座談会 明日の伝統染織 日本伝統工芸展を考える」『染織と生活』第1巻第2号 (1973年8月): 91-96頁.
- 1976
- 森口華弘, 守田公夫「対談 「蒔糊友禅」の美と技法」『染織と生活』第15号 (1976年12月): 13-21頁.
- 1976
- 内山武夫「森口華弘「蒔糊友禅」その新鮮な美の世界 」『染織と生活』第15号 (1976年12月): 22-25頁.
- 1976
- 『友禅: 森口華弘撰集』東京: 求龍堂, 1976年.
- 1976
- 日本経済新聞社『友禅人間国宝森口華弘五十年展』[東京]: [日本経済新聞社], 1976年 (会場: 日本橋三越本店, 北浜三越).
- 1977
- 岡田譲編集代表『森口華弘: 友禅 人間国宝シリーズ: 10』東京: 講談社, 1977年.
- 1982
- 石川県美術館編『森口華弘展: 友禅: 人間国宝』金沢: 北陸中日新聞, 1982年 (会場: 石川県美術館).
- 1984
- 日本経済新聞社『私の履歴書 文化人: 8』東京: 日本経済新聞社, 1984年.
- 1985
- 東京国立近代美術館編『現代染織の美: 森口華弘・宗廣力三・志村ふくみ』東京: 日本経済新聞社, 1985年 (会場: 東京国立近代美術館) [展覧会カタログ].
- 1986
- 滋賀県立近代美術館, 朝日新聞社編『森口華弘: 人間国宝・友禅の技: 特別展』[大津]: 滋賀県立近代美術館, 1986年 (会場: 滋賀県立近代美術館).
- 1994
- 読売新聞大阪本社編『森口華弘・邦彦展: 伝統と創生友禅の美』大阪: 読売新聞大阪本社, 1994年 (会場: 大丸ミュージアムKYOTO, 大丸心斎橋店).
- 2013
- 小山弓弦葉「森口華弘が語った『東博伝説』のゆくえ: 『クローズアップ工芸』展」『現代の眼』602号 (2013年10月): 2-4頁.
- 2019
- 東京文化財研究所「森口華弘」日本美術年鑑所載物故者記事. 更新日2019-06-06. https://www.tobunken.go.jp/materials/bukko/28415.html
日本美術年鑑 / Year Book of Japanese Art
「森口華弘」『日本美術年鑑』平成21年版(425-426頁)友禅の重要無形文化財保持者(人間国宝)である森口華弘(本名平七郎)は2月20日午後4時50分、老衰のため京都市左京区の病院で死去した。享年98。1909(明治42)年12月10日、滋賀県野洲郡守山町に父周次郎、母とめの三男として生まれる。本名は平七郎。1921(大正10)年3月、守山尋常小学校(現、守山市立吉身小学校)を卒業。24年、母の従兄坂田徳三郎の紹介で友禅師・三代中川華邨に師事し、その一方...
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森口 華弘(もりぐち かこう、明治42年(1909年)12月10日 - 平成20年(2008年)2月20日)は、日本の染織家で友禅染めの重要無形文化財保持者(人間国宝)。蒔糊技法を用いた友禅染め作品で知られる。
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- 2024-03-01