A3027

木下佳通代

| 1939 | 1994

KINOSHITA Kazuyo

| 1939 | 1994

作家名
  • 木下佳通代
  • KINOSHITA Kazuyo (index name)
  • Kinoshita Kazuyo (display name)
  • 木下佳通代 (Japanese display name)
  • きのした かずよ (transliterated hiragana)
  • きのした かづよ (transliterated hiragana)
生年月日/結成年月日
1939
没年月日/解散年月日
1994
性別
女性
活動領域
  • 絵画
  • 写真

作家解説

木下佳通代(1939–1994)は神戸を拠点に活躍した、戦後関西を代表する美術家のひとりである。絵画、写真、ドローイングなど多様な技法を通じて「存在」の概念を追求し続けた。 神戸市に生まれ、幼少期より絵画に親しむ。1958年、京都市立美術大学(現・京都市立芸術大学)西洋画科に入学。黒田重太郎、須田国太郎らに師事する一方、彫刻科の辻晋堂、堀内正和との交流も深く、在学中には哲学や教育学を学び、「存在」への関心を大きくした。1962年に卒業後、中学校にて美術教師として勤務。1963年には「京都アンデパンダン展」に初参加。1965年には前衛美術集団・グループ〈位〉と行動を共にし、「存在」に関する問題意識を共有した。 1970年代に入ると、当時の動向に反応するように写真を用いた作品制作を開始。複数の写真を並置することで、知覚や認識、時間と物質の関係を探求し、視覚と存在の関係性を提示した。1972年から1974年にかけては組写真シリーズを多数制作。1976年以降は写真とカラー・フェルトペンによるドローイングを組み合わせ、写真が示す三次元の図像と、描画による二次元表現との差異を通じて、認識の無意識的プロセスを顕在化させた。この理知的かつ禁欲的なシリーズは、当時ハイデルベルク・クンストフェライン(ドイツ)の館長であったハンス・ゲルクに高く評価され、植松奎二の助力もあり1981年に同地で個展を開催した。1983年にはミュンヘンのレンバッハハウス美術館が当時運営していたクンストフォルムというスペースで個展が予定されていたが、スペース側の都合で中止となる。80年代に入って絵画に回帰した木下であったが、同展のプランでは壁画的な演出で空間を大胆に使ったマケットの写真が残っており、当時の美術動向の影響が垣間見える。 写真・版画による制作に制約を感じ始めた木下は、1980年代初頭にパステル作品へと移行。以後、制作は絵画/平面によって進められた。1982年、《’82-CA1》(大阪中之島美術館)を発表し、図式的コンセプトを離れ、「存在そのもの」を画面上に具現化する表現を確立した。以降の絵画作品では、描く・塗る・拭うといった行為を通じて画面表現を更新。1983年から1985年には線の重なりによる塗面表現を展開し、1986年には旧・同志社大学図書館(京都)のために幅5メートル超の大作を奥田善巳の作品との組作品として制作。1987年以降は線による空間認識が強調され、筆の動きやストロークの流れを見せる描法へと発展した。1989年以降はAD&Aギャラリーにて新作を発表。同所の広い展示空間に影響を受け、より大きな作品を制作するようになる。1990年、乳がんの告知を受けるが、手術を拒みながらも国内外の病院を訪ねた。治療法を求め渡ったロサンゼルスでも制作を継続。病魔に抗しつつ、ストロークの重なりによる形と空間の表現を極めた。1994年、55歳で死去。生涯で制作した絵画・ドローイングは1,200点を超え、1982年以降だけでも700点以上に及ぶ。 没後も美術館の収蔵品展やコレクション展、ギャラリーの展示などで紹介され続け、ヒューストン美術館(アメリカ)ほかで開催された「For a New World to Come: Experiments in Japanese Art and Photography, 1968–1979」(2015–2016年)で再び注目され始める。没後30年にあたる2024年には、大阪中之島美術館と埼玉県立近代美術館にて大規模な回顧展が初めて開催された。生前を含め初めての国内美術館での個展となった。 (大下裕司)(掲載日:2025-12-01)

1973
木下佳通代展: 再び、「みる」ことについて・展, ギャラリー16, 1973年.
1974
木下佳通代展: 「みる」ことについて, ギャラリー16, 1974年.
1974
木下佳通代展, 村松画廊, 1974年, 1975年, 1976年, 1978年, 1980年, 1982年, 1983年.
1974
ヴィデオ / 京都 / 1974, ギャラリーシグナム, 1974年.
1974
シグニファイング—言語・事物 / 態度の表明とともに, 京都市美術館, 1974年.
1977
アート・コア現代美術77 シリーズ「自画像 ’77」, アート・コア・ギャラリー, 1977年.
1978
アート・ナウ ’78, 兵庫県立近代美術館, 1978年.
1981
Kazuyo Kinoshita: 1976–1980 (木下佳通代1976–1980展), ハイデルベルグ・クンストフェライン, 1981–1982年.
1983
現代美術における写真: 1970年代の美術を中心として, 東京国立近代美術館, 京都国立近代美術館, 1983年.
1989
木下佳通代展, AD&Aギャラリー, 1989年, 1991年, 1992年, 1994年, 1996年.
1992
ビデオ・新たな世界: そのメディアの可能性, 品川文化振興事業団 O美術館, 1992年.
1994
関西の美術: 1950's–1970's : 創造者たちのメッセージ, 兵庫県立近代美術館, 1994年.
2008
写真の美術 / 美術の写真: 「浪華」「丹平」から森村泰昌まで, 大阪市立近代美術館 (仮称) 心斎橋展示室, 2008年.
2015
For a New World to Come: Experiments in Japanese Art and Photography, 1968–1979, ヒューストン美術館, ニューヨーク大学 グレイ・アート・ギャラリー, ジャパン・ソサエティー・ギャラリー, 2015–2016年.
2018
ニュー・ウェイブ: 現代美術の80年代, 国立国際美術館, 2018–2019年.
2023
女性と抽象, 東京国立近代美術館, 2023年.
2024
木下佳通代: 没後30年, 大阪中之島美術館, 埼玉県立近代美術館, 2024–2025年.

  • 大阪中之島美術館
  • 兵庫県立美術館
  • 京都市美術館 (京都市京セラ美術館)
  • 京都国立近代美術館
  • 和歌山県立近代美術館
  • 東京国立近代美術館
  • 国立国際美術館, 大阪
  • 静岡県立美術館
  • 名古屋市美術館
  • 西宮市大谷記念美術館, 兵庫県

VIAF ID
284681774
ULAN ID
500380955
NDL ID
033636280
  • 2025-10-16