蔡國強氏に聞く「芸術の国際化と作家の立場」
インタビュー:阿部大雅、武田憲人、武田将明、土井伸朗
R202217

この文章は、英文学者の武田将明(1974年生)が行った、1995年のヴェネチア・ビエンナーレのトランスカルチャー展に参加していた蔡國強(1957年生)へのインタビューである。インタビューは、国際展の中の蔡の作品の中にある土地性や、中国、東洋といった文脈に向かっている。
蔡は、矛盾を大きい視野で捉えるような東洋の哲学を「総合」観的な哲学と呼ぶ。自身のプロジェクトにはそのような「総合」があり、東洋的と西洋的なモチーフが並んで現れる蔡の作品において、東洋と西洋を対立的に捉えるのではなく、それぞれ固有の方法論を踏まえて、「総合」へとつなげ、西洋美術の支配的風潮に疑問を投げかけることが重要だと蔡は述べる。
武田は、近年、ひたすら自分の民俗的起源のようなプライベートな文脈を表現することで共感を得ようとする民族性・個人性の芸術作品が多いことを批判的に指摘するが、蔡もそれに同意し、時代の問題を取り扱うような普遍性の重要性を述べる。しかし蔡は同時に普遍性だけではなく、日本のアイデンティティのような生み出された地域への関心も日本の現代美術には必要であるのだという。両者は最後に、普遍性の議論の土台としてモダニズムの議論の有効性に触れて終わるが、蔡には、国際性と民族性の両方を重視し、彼が「総合」という、一見矛盾した対立する両者を広い視野で捉えなおそうとする態度が一貫して見られる。
- 題
- 蔡國強氏に聞く「芸術の国際化と作家の立場」
- 著者
- インタビュー:阿部大雅、武田憲人、武田将明、土井伸朗
- 初出
- 1996
- 翻訳
- ダリル・ジングウェン・ウィー
- 編集
- 武田将明、松山直希
- デザイン
- イエン・ライナム
- テーマ
- アジアの中の日本
- サイト公開
- 2022-10-28
- 更新日
- 2022-10-28
© 2022 Cai Guo-Qiang + Bunka-cho Art Platform Japan
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- サイテーション
- Footnote/endnote: "Interview with Cai Guo-Qiang: The Internationalization of Art and the Position of the Artist," trans. Darryl Jingwen Wee, Bunka-cho Art Platform Japan, posted October 28, 2022, artplatform.go.jp/readings/R202217.
Bibliography: "Interview with Cai Guo-Qiang: The Internationalization of Art and the Position of the Artist." Translated by Darryl Jingwen Wee. Bunka-cho Art Platform Japan. Posted October 28, 2022. artplatform.go.jp/readings/R202217. - 原書情報
- 「蔡國強氏に聞く「芸術の国際化と作家の立場」」『STURM』7号(1996年)、106–115頁。
“Sai Kokkyō ni Kiku: Geijutsu no kokusaika to Sakka no tachiba” in Sturm, no. 7 (1996), 106–115. - 国立国会図書館(NDL)リンク
- ISBN